肺がん手術後の痛みはどれくらい?いつまで続く?麻酔科医が解説
東京駅から徒歩7分の「東京日本橋 早期肺がん日帰り手術クリニック」です。
当院では、健康診断やCT検査で見つかった肺の影や早期肺がんを専門に診療しており、経過観察中の肺結節・すりガラス影のご相談から日帰り手術まで対応しています。
肺がんの手術を受けることになったとき、多くの方が不安に感じるのが「術後の痛み」です。
「肺の手術はかなり痛いのではないか」
「痛みはいつまで続くのだろう」
「痛くて眠れなかったり、日常生活に支障が出たりしないだろうか」
このような不安を抱えている方は少なくありません。
現在の肺がん手術は胸腔鏡手術が主流となり、以前の開胸手術と比べると体への負担は軽減されています。しかし、胸の手術ですので、術後の痛みが全くないわけではありません。
一方で、術後の痛みは「手術をしたら、あとは我慢するしかないもの」でもありません。
同じような手術を受けても、手術中からどのように痛みを抑えるか、術後にどのような痛み止めを使うか、そして実際の効き方を確認して薬の種類や量を調整するかによって、術後の痛みや過ごしやすさは変わります。
この記事では、肺がん手術後の痛みの原因や一般的な経過とともに、麻酔科医の立場から、術後の痛みをできるだけ軽減するために大切なことについて解説します。
結論:肺がん手術後の痛みはいつまで続く?
肺がん手術後の痛みには個人差がありますが、強い痛みを感じやすいのは主に手術当日から数日間です。
その後は徐々に軽くなり、数週間〜1か月ほどで、日常生活では傷の痛みをあまり意識しなくなる方が多くなります。一方で、肋骨に沿ったしびれやピリピリした感覚、違和感などが数か月残ることもあります。
ただし、ここで知っておいていただきたいのは、術後の痛みは「どんな手術を受けたか」だけで決まるわけではないということです。
同じ手術を受けても、必要な痛み止めの種類や量は患者さんによって異なります。そのため、あらかじめ決められた痛み止めを使用するだけでは、その患者さんにとって十分な場合もあれば、足りない場合もあります。
大切なのは、痛み止めを使ったあとに「実際にどのくらい効いたのか」を確認し、調整することです。
「どのくらい楽になったか」
「深呼吸や咳ができるか」
「歩いたときはどうか」
「夜に眠れそうか」
「吐き気や眠気はないか」
こうしたことを確認し、効き方が不十分であれば薬の量や種類を調整し、副作用が強ければ減量するなど、経過をみながら一人ひとりに合わせて微調整していきます。
痛み止めは「処方して終わり」ではなく、「使う → 効き方を確認する → 調整する」というところまでが重要です。
適切な疼痛管理を行うことで、多少の痛みはあっても、深呼吸や歩行ができ、その日の夜に眠れる程度まで痛みを抑えられることがあります。
そのため、「肺の手術だから、術後は痛くても仕方がない」と考える必要はありません。
当院では、手術中から痛みを抑え、術後も麻酔科専門医が実際の効き方を確認しながら、一人ひとりに合わせて薬の種類や量を調整しています。
以下では、なぜ肺がん手術後に痛みが起こるのか、どのように痛みが変化していくのか、そして当院でどのような疼痛管理を行っているのかを詳しく説明します。
肺がん手術後はなぜ痛いの?
肺がん手術後の痛みには、肺を切除することだけではなく、胸壁の傷、肋間神経への刺激、胸腔ドレーンなど、いくつかの原因があります。
肋骨の間から手術をすることによる痛み
胸腔鏡手術では、肋骨と肋骨の間から胸腔鏡や手術器具を挿入します。
その際に皮膚や筋肉などに刺激が加わるため、術後に痛みが生じます。
一般的な手術の傷は、安静にしていると比較的楽で、体を動かしたときに痛みが強くなります。しかし胸は、安静にしていても呼吸のたびに動く場所です。
そのため肺がん手術後は、深呼吸や咳、寝返り、起き上がる動作などで痛みを感じやすくなります。
肋間神経への刺激
肋骨の下には「肋間神経」という神経が走っています。
手術中にこの神経が刺激されることで、傷の痛みだけでなく、肋骨に沿ったピリピリした痛みやしびれ、違和感が生じることがあります。
傷そのものの痛みがなくなったあとも、しびれや違和感だけがしばらく残ることがあります。
胸腔ドレーンによる痛みや違和感
肺がん手術後には、胸の中にたまった空気や液体を外へ出すため、「胸腔ドレーン」という管を留置します。
患者さんによっては、
「傷よりも管が入っているところが痛い」
「深呼吸するとドレーンが気になる」
と感じることもあります。
ドレーンを留置する期間は施設や術後の状態によって異なりますが、一般的な肺切除術では術後数日間留置して管理することがあります。
当院では、術後にレントゲン撮影や歩行などを確認し、安全性に問題がなければ手術後約1時間でドレーンを抜去しています。
ドレーンが抜けることで、痛みや違和感が大きく軽減する患者さんもいます。
肩が痛くなることもあります
肺がん手術後には、手術した側の肩や肩甲骨周囲に痛みを感じることがあります。
肺の手術は横向きの姿勢で行うため、手術中の体位によって肩周囲の筋肉や関節に負担がかかることがあります。また、胸膜や横隔膜などへの刺激が肩の痛みとして感じられることもあります。
当院では、手術中も肩や腕の位置を確認し、同じ部位に無理な負担がかからないよう体位にも注意しています。
こうした肩の痛みは一時的なことが多く、時間とともに軽減していきます。
肺がん手術後の痛みはどれくらい?いつまで続く?
痛みの感じ方には大きな個人差があります。
また、開胸手術なのか胸腔鏡手術なのか、手術の範囲、傷の数や大きさなどによっても異なるため、「何日で必ず痛くなくなる」と一概には言えません。
一つの目安として、強い痛みを感じやすいのは手術当日〜数日間で、その後は徐々に改善していきます。
手術当日
手術当日は、最も痛みを感じやすい時期の一つです。
「動くと傷が痛い」
「息を吸うとドレーンが気になる」
「肩が痛い」
など、痛みの原因は患者さんによってさまざまです。
咳や深呼吸、体を起こす動作で痛みが強くなることもあります。
だからこそ、手術当日の疼痛管理は非常に重要です。
痛みを完全にゼロにすることは難しい場合もありますが、一つの目安として「夜眠れる程度の痛みに抑えること」ができていれば順調だと思っていただいて良いと思います。
術後1〜3日
手術当日を過ぎると、多くの場合、痛みは徐々に改善していきます。
胸腔ドレーンによる痛みや違和感があった場合には、ドレーン抜去後に大きく楽になることもあります。
一方で、咳や深呼吸、寝返り、起き上がるときなどには、まだ傷の痛みを感じることがあります。
この時期も無理に我慢する必要はありません。必要に応じて鎮痛薬を使用しながら、少しずつ通常の生活に戻していきます。
術後数週間〜1か月
傷そのものの強い痛みはかなり軽くなり、日常生活で痛みを意識する機会も少なくなっていく方が多くなります。
ただし、大きく体を動かしたときの痛みや、傷の周囲を押したときの痛み、肋骨に沿ったしびれなどが残ることはあります。
術後数か月
一部の患者さんでは、傷の周囲や肋骨に沿って、
「ピリピリする」
「感覚が鈍い」
「触ると変な感じがする」
といった症状が続くことがあります。
肋間神経への刺激などが関係していることがあり、多くは時間の経過とともに改善していきます。
長期間続いたり、日常生活に支障をきたしたりする場合には、通常の鎮痛薬とは異なる治療を検討することもあります。
術後の痛みは、我慢すればよいものではありません
術後の痛みは、単につらいだけではありません。
痛みが強いと、
- 深呼吸がしづらくなる
- 咳をするのがつらくなる
- 痰を十分に出せなくなる
- 起き上がったり歩いたりするのがつらくなる
といった問題が起こります。
肺の手術後は、しっかり呼吸をして、痰を肺の外へ出すことが重要です。
しかし、痛みのために深呼吸や咳を避けてしまうと、痰が肺の中に残りやすくなり、無気肺や肺炎などの術後合併症につながる可能性があります。
また、術後早期の強い痛みは、その後も痛みが長く残る「慢性術後痛」のリスク因子の一つと考えられています。
そのため、「術後だから痛いのは仕方ない」と我慢するのではなく、必要な期間は適切に痛みを抑えながら、深呼吸や歩行を行い、身体を回復させていくことが重要です。
実際に、術後の痛みをどう抑えているの?
ここからは、実際に手術を行う際の痛み対策について説明します。
術後の痛みというと、
「手術が終わって、痛くなったら痛み止めを使う」
というイメージがあるかもしれません。
しかし麻酔科医の立場から考えると、術後の疼痛管理は、手術が終わってから始まるものではありません。手術中からすでに始まっています。
手術中から、目が覚めたあとの痛みまで考えます
全身麻酔中は眠っているため、患者さん自身に「痛い」という意識はありません。しかし、身体には手術による侵襲が加わっています。
麻酔科医は、手術の進行や血圧・心拍数などの変化を確認しながら、麻酔薬や鎮痛薬を調整しています。
重要なのは、単に手術中に眠っていただくことだけではありません。
手術が終わって目が覚めたときの痛みまで考えながら、手術中から鎮痛薬を調整します。
肋間神経ブロックと複数の痛み止めを組み合わせます
胸の傷の痛みを軽減するために、「肋間神経ブロック」を併用します。
これは、肋骨に沿って走る神経の周囲に局所麻酔薬を投与し、手術部位から伝わる痛みを抑える方法です。
さらに、一種類の強い痛み止めだけに頼るのではなく、肋間神経ブロックと作用の異なる複数の鎮痛薬を組み合わせることで、できるだけ副作用を抑えながら十分な鎮痛を得ることを目指します。
医療用麻薬も必要に応じて使用しますが、吐き気や眠気、呼吸への影響なども考え、必要以上に一つの薬に頼らないようにしています。
痛み止めは「出して終わり」ではありません
術後の疼痛管理で特に大切なのが、痛み止めを使ったあとの経過を確認することです。
痛み止めは、「何を使うか」だけでなく、「その患者さんにどのくらい必要なのか」も重要です。
例えば、よく使われる「カロナール(アセトアミノフェン)」について、
「以前飲んだけれど効かなかった」
「カロナールは弱い薬ですよね」
と言われることがあります。
しかし、薬そのものが効かないのではなく、その患者さんにとって十分な効果が得られる量ではなかった可能性もあります。
また、同じ手術を受けても、必要な痛み止めの種類や量は患者さんによって異なります。そのため、あらかじめ決められた量、タイミングで痛み止めを使用するだけでは、その患者さんにとって十分な場合もあれば、足りない場合もあります。
だからこそ大切なのが、薬を使ったあとの状態をもう一度確認することです。
「どのくらい楽になったか」
「深呼吸や咳ができるか」
「歩いたときはどうか」
「夜に眠れそうか」
「吐き気や眠気はないか」
こうした点を確認し、十分に効いていなければ薬の量を調整したり、別の薬を追加・変更したりします。反対に、眠気や吐き気などの副作用が強ければ、薬を減らしたり内容を変更したりします。
薬を使う
↓
実際の効き方と副作用を確認する
↓
薬の種類や量を微調整する
↓
もう一度確認する
この繰り返しが重要です。
痛み止めは、処方した時点で終わりではありません。実際にどのくらい効いたのかを確認し、その結果に応じて薬の種類や量を微調整するところまでが、術後の疼痛管理だと考えています。
痛みだけでなく、吐き気や眠気にも配慮します
一方で、強い痛み止めをたくさん使えばよい、というわけではありません。
痛みがなくても、吐き気が強くて食事ができなかったり、眠気が強くて歩けなかったりしては、術後を快適に過ごすことはできません。
そのため、痛みだけでなく、吐き気や眠気、呼吸状態なども確認しながら薬を調整します。
「痛みをできるだけ抑えること」と「副作用をできるだけ少なくすること」。その両方を考えながら、その患者さんに合った薬の種類や量を探していくことが重要です。
麻酔科専門医が、手術前から術後まで一貫して管理します
当院では、早期肺がんに対して日帰りでの肺部分切除術を行っており、麻酔科専門医である院長が、手術前の診察から全身麻酔、術後の疼痛管理まで一貫して担当しています。
術後の痛みは患者さんによって異なります。
そのため、術後疼痛管理で大切なのは、単に「強い痛み止めを使うこと」ではないと考えています。
その患者さんが、どこが、どのように、どの程度痛いのか。
痛み止めを使用して、実際にどの程度楽になったのか。
それを丁寧に確認しながら、一人ひとりに合わせて調整することが重要です。
肺がんの手術を受ける患者さんにとって、
「目が覚めたらものすごく痛いのではないか」
「家に帰ってから痛みに耐えられるだろうか」
という不安は大きいと思います。
術後の痛みを完全にゼロにできるとは限りません。
当院では、夜眠れる程度まで痛みを抑えることを一つの目安として、一人ひとりの患者さんに合わせた疼痛管理を行っています。
手術が無事に終わることだけではなく、「手術が終わったあとを、できるだけつらくなく過ごしていただくこと」まで含めて手術を考えています。
肺がん手術後の痛みが不安な方へ
肺がん手術後の痛みは、手術方法や傷の大きさだけで決まるものではありません。
手術中からどのように痛みを抑えるか。
術後にどのように痛みを評価するか。
痛み止めが実際に効いているか。
そして、その結果に応じて薬の種類や量をどう調整するか。
こうした疼痛管理も、術後の過ごしやすさを左右します。
当院では、早期肺がんに対する胸腔鏡下部分切除術を日帰りで行っています。
「癌はしっかり治療したい、でも、できるだけ負担は少なくしたい」という方からのご相談が多く寄せられています。
「肺がんの手術を勧められているが、術後の痛みが心配」
「日帰りで本当に大丈夫なのか知りたい」
「自分の肺がんが日帰り手術の対象になるのか相談したい」
といったご相談も可能です。
CT画像をお持ちの場合には、画像を確認しながら治療方針をご説明いたします。
手術を受けるかまだ決めていない段階でも構いません。
肺がん手術や術後の痛みについてご不安がありましたら、お気軽にご相談ください。


