医療コラム

【密着】早期肺がんの日帰り手術はどんな一日?

【密着】早期肺がんの日帰り手術はどんな一日?

実際の当日の流れを公開

今回は、2月に実際に行った早期肺がん日帰り手術の一日を、時間の流れに沿ってご紹介します。
「本当にその日に帰れるの?」
「痛みは大丈夫?」
「麻酔は安全?」
そういった疑問に、実際の症例を通してお答えします。

13:25 来院・最終確認

  • お名前、手術の最終確認
  • 手術する部位の確認
  • 手術同意書・麻酔同意書の確認
  • トイレを済ませ、着替えてから手術室へ

お着替えはクリニックで用意しております。ネイル、お化粧は落としてきてください。

13:38 手術室入室

手術台の上に寝て、血圧測定、酸素モニター、心電図を装着し、点滴確保を行います。

このほか、脳波モニター、筋電図モニター、体温計も装着します。

  • 13:40 酸素マスクで深呼吸、麻酔開始
  • 13:42 麻酔の薬を投与して鎮静
  • 14:45 呼吸の補助を行ってから挿管、人工呼吸管理を開始

入室してからここまでは7分。安全を最優先に行います。

手術する側の肺が左であったため、身体を右向きとして固定し、消毒をして手術に向けた準備を行います。なお手術時間が短いため、おしっこの管は入れません。

14:05 手術開始

手術の開始に向けて、適切な麻酔深度へ調整していきます。手術する側の肺に空気を送り込まないようにして(分離肺換気)器械が入るスペースを作り、手術を行いやすくします。

手術は胸腔鏡を用いて行います。第6肋間に直径1.5cmの穴をあけてカメラを入れて、まずは胸腔内を観察し、癒着(肺が胸壁にくっついていること)がないか、胸水がないかを確認します。もう一か所は第3肋間で2.5cm皮膚を切開して、指を入れて直接腫瘍を触ります。腫瘍の場所を同定できたら、鉗子と呼ばれる金属製の道具でつかんで、腫瘍から少し離れたところを自動縫合器という、切ることと縫うことが同時にできる器械を使って切除していきます。腫瘍を傷つけないように、周囲をぐるっと3回切除して、14:26に腫瘍摘出が完了しました。手術開始から21分でした。

このあと、手術後の痛みが出ないように、傷を作った肋骨に沿って走っている肋間神経周囲に局所麻酔薬を入れていきます(肋間神経ブロック)。この痛み止めがよく効くと、その直後から患者さんの心拍数が少しずつ下がっていき、麻酔科が点滴から投与している痛み止め(医療用の麻薬)の必要量が減っていくのがわかります。ここで点滴の痛み止めの量を減らさなければ血圧が下がっていくので、効き方を見ながら量を調節したり、血圧を少し上げるお薬を使う場合もあります。

そのあと、止血の確認と、空気漏れがないかどうかの確認を行います。本症例では縫い目からごく小さな空気漏れが1か所あったため、そこを修復してから傷を閉じていきます。小さい方の傷口から、ドレーン(術後の出血や空気漏れがないか確認する細い管)を入れて、手術終了です。

14:51 手術終了

  • 出血量はカウントできないほど少量
  • 身体についている消毒薬を拭いてきれいにして、体の向きを仰向けに戻します

14:57 抜管、麻酔終了

  • 麻酔の薬を減らしていくと、数分で目が覚めて呼吸ができるようになります
  • 口の管を抜いて、麻酔終了

麻酔覚醒は速やかで、起きた後の患者さんの第一声は、「えっ、もう終わったんですか?今何時ですか?」でした。

手術時間:46分、麻酔時間:1時間17分

15:08 回復室へ

  • しばらく酸素投与を行います
  • 痛み、吐き気、寒気などが出た場合は適宜治療します
  • 血圧、酸素の値、心電図を確認し、呼吸や意識の状態を確認します

痛み

この患者さんは、肋間神経ブロックの効果により傷口の痛みはゼロでしたが、手術した側(左)の肩こりのような痛みがありました。これは、手術中に体の向きを横向きにしていた影響が考えられ、痛み止めというよりは肩甲骨周囲のストレッチや、湿布薬で改善することが多く、少しマッサージを行いましたところ、ご帰宅する頃には徐々に改善し、2日後の外来診察時にはすっかり良くなっていました。

寒気

震えるほどではありませんでしたが、少し寒気を訴えられたため、用意している電気毛布を使って温めたところすぐに改善しました。この時はズボンを履かずに手術をしていたのですが、この症例以降は厚手のズボンを履いたまま手術を行うようにしました。それ以降は寒気を訴えた患者さんは今のところゼロです。手術中の体温管理も麻酔科の重要な仕事の一つです。

吐き気・嘔吐

吐き気の訴えはありませんでした。若い女性、非喫煙者、乗り物酔いしやすい、過去の手術後に吐き気があった場合には、全身麻酔後に吐き気が起きるリスクが高く、この患者さんは3つ当てはまっていましたが、手術中に使用する薬剤を工夫し、眠っている間に先回りして吐き気止めを2種類入れておいたことで、吐き気を防げたと考えられます。

16:10 歩行開始、レントゲン撮影

術後約1時間で歩行を開始します。痛み、吐き気、寒気がなければ歩ける方が多いです。この患者さんは70代後半の方でしたが、しっかりご自身で歩けました。

  • 肺が膨らんでいること
  • 出血がないこと

これらをレントゲンで確認し、また回復室へ戻ります。

16:20 ドレーン抜去

空気漏れと出血がないことを確認後、胸に入れている管を抜去します。

立った後から空気漏れが出てくることもあるため、当院では歩行確認後に抜去することとしています。当院で行っているよりも広範囲の肺切除術を行ったあとでもドレーンを入れない施設もあり、それでも問題ないことが多いのですが、安全第一をモットーに、ドレーンは念のため入れさせていただいております。不要になったら速やかに抜去します。

16:25 飲水確認

  • 意識も元通りで、水を飲んでも誤嚥しないか確認します。
  • 痛み止めの内服を開始します

患者さんから痛みの訴えはなかったのですが、手術中に入れた痛み止めが切れる前に飲み薬を開始しておくことで、先回りして痛みを抑えることができます。痛くなってから飲むのではなく、痛くなる前に飲んでおくことが重要で、術後一週間程度は飲み薬を続けてもらいます。

お薬は付き添いのご家族に代わりに受け取りに行ってもらいます。手術中に取りに行ってもらうことで、スムーズにご帰宅いただけます。なお、調剤薬局は近隣に複数ありますので、スタッフがご案内いたします。

17:10 着替えてご帰宅

  • バイタルサイン安定
  • 歩行可能
  • 飲水可

これらを満たしていることが確認できたらご帰宅可能です。

来院してからご帰宅まで、3時間45分でした。概ね4時間程度でご帰宅できます。

ご帰宅後

この患者さんは、2日後に術後診察を予定していましたが、調子が良いので行かなくても大丈夫でしょうかとの連絡がありました。しかし、念のため来ていただきレントゲンを撮り、問題がないことを確認しました。次回は半年後のCT検査で経過を診させていただきます。

以上が、2月に行った症例の実際の流れになります。

患者さんは70代の方で、以前別の病院で手術をした際には術後にせん妄となった経験があるようでしたが、今回は非常にすっきり目覚め、ご自身の足でしっかり歩いて帰られました。手術前は術後について不安なことも多かった患者さんですが、終わってみると術後診察をキャンセルできると思うくらいに調子が良いと感じてもらえたことは、麻酔科としても大変嬉しく思いました。

なぜ日帰りが可能なのか?

理由は3つあります。

① 早期肺がんの部分切除に限定している

手術時間、麻酔時間が短いことが日帰りできる1つの要因です。

② 患者さんを選別している

「手術ができる=日帰りでできる」わけではありません。術前の全身状態を加味して日帰り手術ができるかどうかを選別しています。難しいと判断した場合には、適切な連携医療機関をご紹介しています。

③専門チームによる手術と麻酔管理

肺がん治療を専門とする外科医と麻酔科の専門医がチームで行っていることも大きな要因と考えます。

安全性について

ご帰宅後に呼吸が苦しい、意識が悪い、顔が腫れてきたなどの異変があった場合には、夜間でもつながる電話番号をお渡ししますので、すぐにご連絡ください。

入院が必要と判断した場合は、連携病院で入院の手配をいたします。

日帰りは「無理に帰す」ことではありません。

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この記事の監修者

東京日本橋 早期肺がん日帰り手術クリニック
院長 浅越 佑太郎
日本麻酔科学会 麻酔科指導医、日本専門医機構 麻酔科専門医
国立がん研究センター中央病院で共に研鑽を積んだ呼吸器外科医と協力し、東京日本橋に早期肺がんの日帰り手術を専門とするクリニックを開院。患者さま一人ひとりに寄り添い、身体的・精神的な負担を最小限に抑えた治療の提供を目指しています。
日本麻酔科学会 麻酔科指導医、日本専門医機構 麻酔科専門医
国立がん研究センター中央病院で共に研鑽を積んだ呼吸器外科医と協力し、東京日本橋に早期肺がんの日帰り手術を専門とするクリニックを開院。患者さま一人ひとりに寄り添い、身体的・精神的な負担を最小限に抑えた治療の提供を目指しています。
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