「がん=⼊院が必要」とは限らない

⼀般的に「がん」と聞くと、⼿術に加えて抗がん剤治療や放射線治療が必要となり、⻑期の⼊院や通院治療が続くというイメージを持たれている⽅が多いかもしれません。確かに、そのような治療を要する種類やステージのがんも存在します。

しかし、早期に発⾒できたがんの中には、1回の⼿術だけで切除が完了し、その後に抗がん剤治療や放射線治療が不要な場合もあります。さらに、⼿術が低侵襲で短時間に終わり、⿇酔の技術が安定していれば、⼊院せずに⽇帰りで⾏うことも可能です。当院で⾏っている肺部分切除は、まさにそのような条件を満たす⼿術です。

「がんなのに⽇帰り⼿術が可能なの?」と驚かれるかもしれませんが、当院での肺部分切除⼿術は、実際に⽇帰りでの対応が可能です。

入院施設

⼊院することのデメリット

⼊院というのは、皆様が想像される以上に⾮⽇常的な環境です。そのため活動量が低下し、筋⼒や認知機能が落ちる可能性があります。わずか数⽇間の⼊院であっても、患者さんによっては退院後に⽇常⽣活へスムーズに戻ることが難しくなるケースもあります。

⾃宅とは異なる環境での⽣活は、ストレスや不眠、術後せん妄の原因になることもあります。また、⼤部屋では他の患者さんとの距離が近く、会話や⽣活⾳が気になることもあるでしょう。外出や⾷事などが制限されることにより、⽣活の⾃由度も⼤きく下がってしまいます。

もちろん⼊院が必要なケースもあります。ただし、こうした⼊院によるデメリットを踏まえると、⽇帰り⼿術が可能な状況であればそれに越したことはないと考えます。

⼊院することのデメリット

⽇帰り⼿術のメリット

⼿術当⽇にご⾃宅に戻り、⽇常⽣活に復帰できることこそが何よりのメリットであり、同時に最も良いリハビリになると考えています。もちろん重たい荷物を持ったり、激しい運動をすることは控えた⽅が良いのですが、デスクワーク程度であれば当⽇から可能です。

⼊院基本料、差額ベッド代、パジャマ代、⾷事代が不要ですので、費⽤負担が少なく抑えられる点もメリットの⼀つです。

日帰り手術

⽇帰り⼿術のデメリット

たとえ早期肺がんであり、外科的な観点から部分切除によってがんを完全に切除できると判断されたとしても、当院での⽇帰り⼿術をすべての患者様にご提供できるわけではありません。つまり、「⼿術が可能であること」と「⽇帰り⼿術が可能であること」は、必ずしも同義ではないのです。

診察

日帰り⼿術が適応できない⽅

⽇帰り⼿術を安全に⾏うためには、⿇酔科的な視点で全⾝⿇酔が安全に実施できることが前提となります。たとえば、もともとの肺の状態が著しく悪い患者様(呼吸機能検査の数値が低い⽅)の場合には、術後に肺炎などの呼吸器合併症を発症するリスクが⾼まります。そのため、こうしたケースでは⽇帰りでの⼿術は選択すべきではないと考えています。

また、概ね80歳以上の患者様についても、基本的には⽇帰り⼿術は推奨しておりません。もちろん、最近の80代の⽅々は⾮常にお元気な⽅も多く、年齢だけで⼀律に判断するのは適切ではありません。⽇帰り⼿術においては「⽇常⽣活の活動度」が重要な判断基準となります。

たとえば、⾷事‧トイレ‧⼊浴‧階段の昇降‧買い物といった⽇常動作をすべて⼀⼈で問題なく⾏えているかどうかが⼀つの⽬安になります。これらにおいて介助を必要とする⽅に関しては、⽇帰りでの⼿術は避けるべきだと考えています。

⼀⽅で、ご年齢が80歳以上であっても上記のような⽇常⽣活を⾃⽴して⾏えており、ご家族のサポートが得られる場合には、⽇帰り⼿術が可能なケースもあります。少しでもご不安があれば、お気軽にご相談だけでもしていただければと思います。

なお⽇帰り⼿術が不適と判断した患者様は、国⽴がん研究センター中央病院などにご紹介いたします。

合併症について

縫った肺からの空気漏れや、術後の肺炎、その他予期せぬ合併症(はじめて使う薬剤に対するアレルギーによるアナフィラキシーショック、肺組織の⾼度癒着など)は、どの⼿術でも、どこの病院でも常に起こり得ます。院⻑は、⼿術中の⿇酔だけではなく、集中治療室でも重症患者の全⾝管理や急変対応をしてきましたので、起こった事象に対して迅速に必要な初期対応を当院でさせていただいた上で、適切な病院へと搬送し、安全に対処させていただきます。

もしもご帰宅後にお困りのことがございましたら、当⽇つながる電話番号をお渡しいたしますのでご連絡ください。

高齢者