医療コラム

肺がん手術の麻酔に必要な技術

麻酔

私は麻酔科医ですので、肺がん手術の麻酔方法について少しお話ししたいと思います。手術当日にご帰宅いただくためには、外科医だけでなく麻酔科の技術も非常に重要です。

まず、麻酔科医というのは、患者さんから見ると「医師の中でいちばん何をしているのかわかりにくい存在」かもしれません。というのも、麻酔科医が仕事をしている間、患者さんは意識がなく、眠って目覚めたときには手術が終わっているからです。

麻酔科の術前外来で、患者さんから、麻酔科の先生も手術中は立ち会うのですか?と質問を受けることがあります。当然、最初から最後まで患者さんの頭側で手術の進行状況と患者さんの身体の反応に合わせて麻酔薬の深さや痛み止めの量を調節したり、輸血の判断を行ったり、体温を管理したり、人工呼吸器を調節したりしているのですが、この質問をたくさん受けるくらい、麻酔科医の仕事というのは患者さんからは分かりにくいものなのです。

手術室に入室された患者さんは、ベッドに横になり、心電図、血圧計、脳波測定器、酸素モニターなどを装着し、点滴用の針を静脈に挿入します。その後、お顔の前に酸素マスクを当て、深呼吸をしていただきます。というのも、このあと投与する薬の影響で、眠った直後に呼吸が停止するため、その前にたくさん酸素を吸っておいていただいた方が安全だからです。呼吸が止まってから体内の酸素がなくなるまでの時間を数分延ばすことができ、この数分が麻酔科医が患者さんの命を守るために非常に重要な時間となります。

手術中の呼吸管理と気道確保の繊細な工程

十分に酸素を吸っていただいた後、薬を投与すると10秒ほどで意識はなくなり、呼吸が停止します。そのままでは危険ですので、酸素マスクをしっかりと当てて呼吸を補助し、最終的には口から太いチューブを挿入して肺の手前まで進めて(気管挿管)、空気の通り道(気道)を確保します。この管を人工呼吸器に接続することで、人工呼吸が可能になります。

この一連の工程を安全に行うために、眠る前にしっかりと酸素を吸っていただくことが非常に重要です。さらに、気管は非常に敏感で、お茶が一滴入るだけでもむせてしまうような場所ですが、肺がん手術ではそこに親指ほどの太さのチューブを約30cm挿入します。患者さんは眠っていて記憶はありませんが、ただ眠っているだけの状態では強くむせたり、血圧が上昇したりします。眠っていても、痛いことをされると身体は反応するということです。

そのため、管を入れる前に強力な痛み止め(医療用麻薬)や、筋肉の動きを止める薬(筋弛緩薬)を投与することで、血圧の上昇やむせを防ぎ、安全に挿管を行います。

肺がん手術特有の「分離肺換気」とは

ここからは、肺の手術に特化した話です。

肺がんの手術の麻酔管理が他の手術と大きく異なるのは、手術を行う側の肺を膨らませてはいけないという点です。たとえば右肺の手術では、右肺には酸素を送り込まない状態で手術を行い、左肺だけで人工呼吸を行います。酸素濃度を上げたり、呼吸回数を増やすことで、片方の肺だけでも全身に酸素を届けることが可能です。これを「分離肺換気」と言います。

ただし、左右で別々に空気を送る必要があるため、通常の手術の際に使うものよりも太い管を使用します。この太い管のせいで、手術後の麻酔から目が覚める際に、より一層の注意が必要となります。

覚醒時のむせを防ぐための繊細な薬剤調整

手術が終わった後、適切な麻酔管理をしていれば、5分もかからずに目が覚めますが、目覚めた直後はまだ口の中には管が入ったままです。これは肺の手術に限らず、全身麻酔を行ったすべての症例で同様です。

目が覚めて、意識の確認ができて、ご自身で呼吸ができる状態に戻っていることを確認できたら、その後にお口の管を抜きます。でなければ、管を抜いたものの呼吸ができないという非常に危険な状況となってしまうからです。

勘の鋭い方はもうお気付きだと思いますが、肺の手術の時に使う太い管が、目が覚めた状態で空気の通り道に入っていると苦しいんじゃないですか?という声が聞こえてきそうです。まさにその通りで、うまく麻酔から覚まさなければ、強くむせてしまいます。

特に肺の手術では、目覚めた直後に強くむせてしまうと、肺の中の圧力が急上昇し、肺を縫い合わせた部位が破ける可能性があるため、むせずに管を抜ける絶妙な麻酔の深さが求められます。ここが麻酔科医が一層の注意を払わなければならないところであり、呼吸器外科医も気にしているポイントとなります。

目覚める瞬間、ご自身の呼吸は戻っているけれども、管がしんどくてむせない程度の麻酔の深さに調整する必要があります。麻酔が深すぎると呼吸も出ない、目も覚めないですし、麻酔が浅すぎるとむせて暴れてしまいます。つまり、眠たくなるお薬はもう身体の中に残っていない、体が動かなくなるお薬も残っていない、でも、管がしんどくてむせない程度の痛み止めは身体の中に残っているという絶妙なタイミングでパチっと目が覚めるようにしなければならないということです。

これがうまくいかないと、目が覚めた瞬間にむせたり、管がしんどくて暴れたりするため、術後の合併症のリスクが高まります。

経験から培われた技術と、当院での安心体制

このような麻酔に関する技量は、外科医と同様、日々経験を重ねる中で身につけていくもので、患者さんにはわからない部分での重要な要素となります。

当院では麻酔管理の質に妥協はありません。これまでに積み重ねてきた経験をもとに、患者さんが安心して手術に臨める麻酔管理体制を整えています。

手術後は歩いて帰宅

当クリニックで術後の患者さんをみていると、手術後1時間でご自身で歩いてお着替えをしてもらえるようになります。手術中に使う薬を必要最小限にするよう心がけているため、患者さんに投与する薬の総量が少なくて済むことと、適切な痛み止めを十分な量投与していることで早期の離床が可能となります。

麻酔科医は、上手な外科医を見極めることができる

手術中、麻酔科医は常に外科医の手術を観察しながら、手術の進行状況や患者さんの身体の反応に応じて、薬剤の量をその都度調整しています。

たとえば、「この部位を切除するときは、いまの薬の濃度では少し足りないかもしれない」と判断したり、「切除が終わったので、鎮痛薬を少し減らさないと、このあと血圧が下がってしまう」といったように、リアルタイムで最適な麻酔管理を行います。

つまり、手術の最初から最後まで、麻酔科医は外科医の手技を見続けています。さらに、さまざまな外科医と手術を共にすることで、自然と外科医同士の技術や手際の違いが見えてきます。

言い換えれば、麻酔科医は「手術が上手な外科医」を見極めることができてしまう立場なのです。

そのため、麻酔科医同士で「自分が病気になった時に誰に手術をしてもらうか」という話題になったときには、たいてい見解が一致します。

肺がん手術の“待ち時間”というリスクをなくすために

私自身、これまで多くの手術に携わり、数多くの外科医の仕事を見てきました。その中で確信を持つようになったのが、肺がんと診断された患者さんが「できるだけ早く」「安全に」「待ち時間を最小限にして」、そして「信頼できる外科医と麻酔科医による手術を受けられる」場を作る必要がある、ということです。

その想いをかたちにするために、私は「東京日本橋 早期肺がん日帰り手術クリニック」の開院に至りました。

早期肺がんは当院までご相談ください

東京日本橋 早期肺がん日帰り手術クリニック

東京駅から徒歩7分、日本橋駅直結の「東京日本橋 早期肺がん日帰り手術クリニック」では、早期肺がんに対し、日帰りでの肺部分切除手術による根治を目指した治療を行っています。

一般的に「肺がん」と聞くと、長期の入院や継続的な通院治療が必要というイメージを持たれる方が多いかもしれません。確かに、そのような治療を要する種類やステージの肺がんも存在します。

しかし早期肺がんの中には、麻酔科医による適切な全身麻酔管理のもと、習熟した外科医が手術を行えば、1回の手術で切除を完了し治療を終えることが可能な肺がんも存在します。当院ではそのような肺がんに対して、日帰りでの肺部分切除手術を行っており、患者様の身体的負担を最小限に抑えつつ、根治を目指すことができます。

  • 健診で肺に影が見つかったが、どこを受診すればよいかわからない
  • できるだけ早く肺がんの手術を受けたいが、なかなか手術日が決まらない
  • 他の医師の意見も聞いたうえで治療方針を検討したい

実際に、このようなお悩みをお持ちの患者さまから、多くのご相談をいただいています。

ご来院が難しい方に向けて、24時間対応の無料メール相談・LINE相談もご用意しております。肺の陰影や肺がんについて不安がある場合は、当院までご相談ください。

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この記事の執筆者

東京日本橋 早期肺がん日帰り手術クリニック
院長 浅越 佑太郎
日本麻酔科学会 麻酔科指導医、日本専門医機構 麻酔科専門医
国立がん研究センター中央病院で共に研鑽を積んだ呼吸器外科医と協力し、東京日本橋に早期肺がんの日帰り手術を専門とするクリニックを開院。患者さま一人ひとりに寄り添い、身体的・精神的な負担を最小限に抑えた治療の提供を目指しています。
日本麻酔科学会 麻酔科指導医、日本専門医機構 麻酔科専門医
国立がん研究センター中央病院で共に研鑽を積んだ呼吸器外科医と協力し、東京日本橋に早期肺がんの日帰り手術を専門とするクリニックを開院。患者さま一人ひとりに寄り添い、身体的・精神的な負担を最小限に抑えた治療の提供を目指しています。
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